積みプラ戦記

コラム

No.1 ガンダム愛

僕がwebサイトを作りたいと思ったそもそもの理由は30年近くファンを続けているガンダムという作品を自分なりの価値基準で昇華させたいと思ったからだ。だから、最初に書くコラムもガンダムについて書こうと思う。

はじめに、僕はガンダムファンというよりはガンプラファンだ。メカデザインと世界設定に魅力を感じていて、日々暇さえあればガンプラ製作を楽しんでいる。ガンプラに触れてからもう30年くらい経つだろうか。進化し続けるガンプラとガンダムのアクションフィギュアに触れるのはとても楽しく、この歳になっても卒業できない。

一方で、アニメ作品としてのガンダムに対しては実はそれほど評価していない。というよりも、あまり見ない。

僕が好きな作品は「ガンダムUC」を筆頭に「MSイグルー」「Gガンダム」「MS08小隊」「逆襲のシャア」「ポケットの中の戦争」が挙げられる。ここには挙げなかった、つまりあまり好きではない作品でも、メカデザインは好きでプラモだけは買っているものは多数ある。例えば、ゼータガンダムはメカデザインとしては今でも1,2を争うくらいに好きだ。

ストーリーについては、学生時代に小説版を読んだ事で大体の作品について把握しているが、この富野監督が書いた小説のせいで、ガンダムのストーリーとアニメ作品を嫌悪するようになってしまった。あの富野小説は本当にきつかった。読んでる最中に何度もため息をついて閉じるくらいに。言い回しや台詞回し、押し付けがましい理屈などがものすごくイライラさせてくれる。ストーリーを把握したいがために読み始めたが本当に苦行だった。

実際のところ、富野監督に文才を求めるのは筋違いなのかもしれない。とはいえ、世に出している以上は出せるだけのクオリティを保証していると思うのが普通だし、そう考えるとあのどうしようもない小説程度の内容ならガンダムはお粗末な物語だと嫌気がさすのも仕方が無いではないか。

結局、メカデザイナーと玩具メーカーの多大な努力でガンダムというブランドが維持されていると、自分なりの結論を出してからはストーリー無視で見た目のよいガンプラと設定資料集だけで、ガンダムの世界を楽しんでいた。

ストーリーに再び目を向けるきっかけを作ってくれたのはPS2のゲーム「連邦VSジオン」だった。このゲームのストーリーモードでは、プレイヤーはどちらかの軍に所属する一兵士として、一年戦争を戦い抜く。戦いの最中、アムロやシャアといった本ストーリーの主だった登場人物もNPCとして登場する。時には味方として、またある時には敵として。劇中で有名なセリフも飛び交うのだが、このゲームでセリフを聞いたときに自分の中で大きな転換点が訪れた。あの小説の中で忌み嫌ったあの独りよがりなセリフを戦闘シーンの中で聞くとあまり違和感を感じない。なんだか、演劇を見ているような感覚だった。このとき、ガンダムとは映像で楽しむ物なのだと改めて気がついたのだ。

だからといって、それからアニメ作品を全部見直したりはしていない。気になる物から少しずつ観賞した。レンタルして見たけど途中で続きを見るのをやめたものもある。今はあの時ほどストーリーを嫌悪していない。ちなみに、富野小説版ガンダムは全て捨てた。

歳をとって捉え方が広くなったこともあるだろうが、ガンダムという世界そのものが広がった事が大きい。作品群となり、視点の異なる様々なストーリーが映像やゲームで展開された事が、富野監督作品オンリーの閉塞感を薄めてくれたのではないだろうか。

やはり、玩具メーカーを中心とした企業努力がガンダムブランドを維持してきたということになるのかもしれない。今やガンダムは映像作品のタイトルではなく、玩具メーカーと映像制作会社が展開させた一つのジャンルとなっている。おかげで僕のような斜めに構えた捉え方をして、楽しんでいるファンも存在できる。

そして、ガンダム作品同士がコラボするようなオールスター系のゲームや、ガンダムではなく、ガンプラを扱った作品がヒットするようになっていることからも、この事象はますます加速していくと思う。

これはいい流れだと思う。やっと、解放された。自分の主観でガンダムの世界を楽しめるようになった。ある意味、カミーユやアムロを無理に好きにならずに済むガンダムワールドが展開されたのは、とても喜ばしい事態だと僕は感じている。

ガンダムは歴史ある作品なので、ファンの数も層も多い。しかし、同じガンダムファンでも、ガンダムのどこに魅力を感じているかが異なるとまったく会話が成立しないし、仲良くもなれないらしい。ガンダム関連のSNSや掲示板ではいつもどこかで論争が繰り広げられているのだ。しかも実にどうでもいい話題で。

要するに好き嫌いの問題でしかないのだが、同じ作品を愛している以上どうにか自分の主張を理解してもらいたい、というか賛成して欲しいという気持ちが争いの元になるのだろう。よく見かけるテーマは最強のモビルスーツは?パイロットは?といったものや、原案者の富野監督が関わってないから偽物といった内容だ。これも一つの作品愛の現れなのかもしれない。殺伐としていて実に狭量だとは思うが。

そんなわけで、僕は僕なりにガンダムを楽しんでいる。

Last updated: Jan. 14 2015