積みプラ戦記

コラム

No.12 ブンドドの作法1 ブンドドとは?

ブンドドという言葉はオタには馴染みがあっても一般的ではあるまい。一応、説明しておくとおもちゃを手に口でエンジン音やら機銃発射音を「グォーン、ダダダダダッ、ドカーン」とか言いながら遊ぶごっこ遊びのことだ。ブンドドという言葉自体もその時の「ぶぅ~ん、どどどどど」というオノマトペから由来しているので非常に直感的だ。このブンドドは男なら一度はやったことがあるはずだ。大人になってもやっている愛好家の一人として僕なりにブンドドについて語ろう。

ブンドドとは、前述したようにプラモなりおもちゃなりを手に持って口で擬音を発しながらのごっこ遊びが基本形となる。これについて、作家の福井晴敏氏がエッセイ「四十の魂」の冒頭で息子さんがミニカーで遊んでいる姿を書かれているが、これぞまさに基本形だ。そして、いま現在同じ光景を僕は目の前にしている。息子が「ピーポーピーポー」とか「ウゥ~」と言いながらミニカーを転がして遊んでいる。一体、ブンドドは何歳くらいから始めるのかと思っていたが、答えはおよそ2歳だった。手に持っているおもちゃが何のミニチュアなのかを把握し、実機がどういうものかを知っており、なおかつ自分で実機の動きを再現しようとする。これができるようになるのが、2歳前後からというわけだ。まだ、映像作品等でカーアクション等を見る機会が少ないため、効果音等は控えめ。これから徐々にブンドドをする上での表現は増えてくるだろう。今は、バックする時に「ピーッピーッピーッ」とは言っている。

そして、ちょっと感動したのが息子の姿勢。床に頭をつけて寝そべりながらブンドドに興じる。妻がこれを見た時に眠いのかと思ったそうだ。とんでもない。これこそ、まさにブンドドの基本的な姿勢なのだ。実際今でもこれをやっている立場の僕から言わせてもらうと、これは実機に近いアングルから眺めることによって、自分の中での臨場感を高めているのである。そして、その模型の最も映えるアングルを探してその工業製品の機能美を堪能しているのだ。模型は通常、大型の工業製品(架空機も含む)を縮小した立体物なので、当然低い視点から見た方がリアリティは増す。だからこの寝そべってお尻を突き出しておもちゃで遊ぶというのはごく自然な姿なのだ。僕も小さい頃、ミニカーやら鉄道模型を眺めながらまさに同じ姿勢を取っていたので、息子の姿を見て誰から教わらなくともみんなやるんだと感動したわけだ。

基本的なブンドドの型は上記の通りなのだが、人は成長すると様々な知恵がつく。そして羞恥心が芽生える。主にこの二つの事が起爆剤となってブンドドは発展していくのだ。抽象的すぎてよく分からないだろうから具体的に紹介していこう。

大人になっても模型やアクションフィギュア等が好きでいる人。僕もその一人だが、どんなブンドドを展開していくのか。それは基本的に黙って眺めるだけである、端から見ると。だが、実際にやっていることは子供の頃に興じたブンドドとほぼ同じだ。ロボット模型のようなポーズを決められるモノについては、これぞ!というポーズを付けて、口でこそ出さないが心の中では例の「ブゥーン、ドドド」と同様に迫力ある機体の駆動音と火器の発射音が鳴り響いており、自分のお気に入りのアングルから気の済むまで眺めて、その機体の美しさを堪能するのだ。端から見ても少しだけ分かりにくいだけで基本的には何も変わっていないのだ。

僕自身のことだが、以前これを夕食前に居間でやっていたことがある。アクションフィギュアにポーズをとらせて悦に入りながらビールを飲んでいたのだが、それを見ていた妻は心底驚いたそうだ。ガンダムをつまみにビール500mL空けよったと。何年か前のことだが、今でも話のネタにされている。

眺めるブンドドを楽しむだけは満足できず、さらに技術と時間を注ぎ込む人もいる。自分の中で展開される世界を他者にも見えるように表現する試みだ。つまり模型やフィギュアの写真を撮影して形にするということ。その後は表現したい技法によって分岐する。ブンドドでのオリジナルストーリーを重視している人は、写真を添えて小説のようにストーリーを書いていく。これを大々的にやっている個人サイト等は幾つかあるようだが、2ちゃんにもブンドドのスレがあった。スレの住人が写真とともにストーリーを投稿している感じだった。楽しんでやっているなーと微笑ましかったが、仮面ライダーを登場させる人が多く、仮面ライダーに興味のない僕はそこまで食いつけなかった。繰り返すが、すごく楽しそうではあった。ただ、好みの問題で入り込めなかっただけの話だ。

さらに絵に拘りたいと思うならば、写真に加工を施してみるのもありだ。CGを使ってエフェクトを追加することで模型写真に迫力と臨場感が加味される。実際、ブンドドを表現する上で、ここまで出来たら上出来だと思う。当然、そのためには技術を習得する必要があるわけだが。さらに動画にしようと思ったら、模型の写真を少しずつ動かして連続で撮影し、映像としてまとめるというストップモーションアニメを制作するツワモノまでいる。大人がブンドドをやるとここまでレベルが上がるのだ。

僕もストップモーションアニメとまでとは行かずとも、いつか CGエフェクトを乗せた模型写真を製作したいと思っている。だが、それが実現するのはしばらく先のことになるだろう。当面はプラモを作って、ブンドドのワンシーンとも言えるような写真を撮り、構想を練るという作業が続くだろう。構想を練るだけでも実際、非常に楽しいものだ。ブンドドは模型に命を注ぐ作業であり、その模型の魅力を最大に引き出す作業といえるだろう。

ブンドドの作法2へ続く。

Last updated: Mar. 12 2016